第三章




「んっ、ぅ……ぁぁ」
「この貪欲な身体……生来のものか、それとも俺の調教の成果か。どちらかな、お嬢様?」

愉しくて仕方がないといった口振りに、フェリチータは喘ぐことしかできない。
指先で子宮口にずくずくと触れられ、蜜を掻き出すように抜き差しされた。
円を描くような動きでとろみを練って粒を捏ねられ、また体内に忍び込まれる。
奥まった所で鍵状に曲げられる指の関節で狭隘な洞が拡げられ、更にたっぷりと愛液が滴った。

「君のいやらしい蜜でシーツがぐっしょりだ。色が変わってしまうくらいにな」
「やっ、言わないで……っ」

頭の中は霞がかっていたが、何とか彼の言葉を理解して、反駁を試みた。
言われなくても、充分自覚している。
ジョーリィの指で解された女孔はとろとろに融解し、気持ち良すぎて身体の形を保っていられないのではないかと思うほどだ。
熟れたように熱い蜜壺は確かな刺激を求め、ズキズキと痛いほどに疼いている。

だけど、足りない。

もっと彼に追い詰められたい。

理性も何もかも失って、めちゃくちゃになるくらい、愛してほしかった。

「ジョー……リィ……っ、も、おねがい……っ」
「何を、お願いしたいのかな?」

思わず口から零れてしまった欲求に、獲物を見つけたハンターのように紫の目がギラッと光る。
その妖しい輝きに、フェリチータは自分の失言を悔いたがもう遅い。
こうなってしまっては、詭弁に長けた相談役に舌戦で勝てる者など、世界中のどこを捜したっていないだろう。
言い返せば言い返すだけ、何倍にもなって厭味が飛んでくることは、今までのつき合いで嫌というほど知っている。
これ以上焦らされ、身体を弄ばれたら気が狂ってしまいそうだった。

「快楽に従順な淫らな花嫁だと、正直に認めろ。素直に強請れば応えてやらんこともないぞ?」

悪魔の誘惑が、重く低く、耳許で囁かれる。
平常時であれば簡単に跳ね除けられるのに、蕩けた心と身体には酷く魅力的な口説き文句に聞こえてしまう。
屈辱的なほどの羞恥を堪え、フェリチータは掠れた声を絞り出した。

「み……みとめる、から……おねがい……っ、ちょうだい……!」
「どこにだ?」

恥ずかしさに苛まれながらも、やっとの思いで口にした願いに、残酷とも思える台詞が返された。
火を吹きそうだった顔から、さっと血の気が引く。
フェリチータの顔が赤から青に変わるのが余程おかしかったのか、目の前の非道な男は愉快そうに肩を揺らしている。

「どうした? 言えないのなら、俺にわかるよう自分で触ってみろ」
「……っ!!」

悪魔の囁きどころか、死刑宣告を受けたようなショックで身体が固まる。
だがそれも一瞬のことで、戸惑いながらも自分の指を媚肉に伸ばした。

「あぁ……っ」

びりびりと拡がる官能の波紋に、思わず嬌声を上げる。
秘裂に沿って動かせば、甘い衝撃に全身が打ち震えた。


今や、フェリチータはすっかりジョーリィの命令に服従していた。
デュエロの勝利で掴み取ったはずの自由を手放し、操り人形のように支配されてしまっている。
本来ならば嫌悪を覚える状況だ。
それなのに、彼に従属する悦びを感じ、指の動きは止められない。



『Il giorno per Lei』第三章本文より抜粋
※読みやすいように改行を多くしています。
※実際の本文は縦書きです。





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