Desire




 さらさらとペンを走らせて、紙に文字を綴っていく。
 最後に己の名前を記し、フェリチータは僅かに緊張の糸を緩めた。
 コトッとペンを机に置き、空いた右手の人差し指で文字をなぞりながら慎重に自分が書いた文章を読み返す。
 誤字や脱字、未記入箇所がないことを確認し、今度こそ完全に身体から力を抜いた。


 「終わったぁ」


 職務を無事に終えた満足感と解放感から、自然と笑みが零れる。
 軽く伸びをしながら壁にかかった時計を見上げると、正午を少し過ぎたところ。
 コックのマーサが準備してくれている昼食を期待したお腹の虫がぐぅと鳴ってしまい、ちょっと恥ずかしい。

 (部屋に誰もいなくて良かった)

 本来ならば、今日は剣のセリエは休日だ。
 けれども幹部の役目である書類仕事が溜まっていたので、フェリチータは1人きりで仕事をしていたのだ。
 ここ数日はほとんど執務室に籠りきりだったからか、身体が少し重い気がする。
 お昼を食べたら訓練場へ行こうと椅子から立ち上がったのと同時に、ドアを叩く音が耳に届いた。


 「どうぞ?」


 心当たりのない来客に首を傾げつつも入室を許可すると、遠慮なく扉が開かれる。
 ドアノブを握り、もう片方の手をポケットに突っ込んで悠然と構えている男。
 まるでフェリチータの方が来訪者であるかのような態度だ。
 しかし彼女は今更そんなことは気にせず、突然やって来た恋人の姿に満面の笑みを浮かべた。


 「ジョーリィ!」
 「書類の方は順調かな、お嬢様」


 会えた喜びを素直に表すフェリチータとは対照的に、ジョーリィは態度も口調も素っ気ない。
 せっかく2人きりなのにも拘わらず冷めた雰囲気を寂しく感じながらも、相談役という上司に仕事の報告をする。


 「今ちょうど終わったところ」
 「見せてみろ」


 あくまでも事務的なやり取りに、ちょっぴりの期待で膨らみかけた心が萎んでいくのがわかった。
 褒めてほしい……なんて思ったことが知られたら、子どもだと呆れられるだけだろう。
 ジョーリィのアルカナ能力が【恋人たち】でなくて良かったと考えつつ、フェリチータは書き上げたばかりの紙の束を手に取った。
 執務机の前まで回り込み、部屋の真ん中でどことなく不機嫌そうに佇んだままの彼に直接渡そうとする。

 (ちょっとこっちに歩いて、受け取りに来てくれてもいいのに)

 だが実験以外に労力を割くのが嫌いな錬金術師は、その少しの距離を歩くのも面倒らしい。
 結局フェリチータが正面に来るまで、ジョーリィは一歩も動かなかった。


 「はい、書類」
 「……」


 笑顔で手渡すも、相手は相変わらずの無言だ。
 紙面に書かれた文字を追う眼差しはサングラスに隠されていて、感情がちっとも読めない。
 ただ、その長身から滲み出るオーラが穏やかなものでないことは、空気を通してひしひしと伝わってくる。

 彼の機嫌を損ねることを何かしただろうか。

 確かに書類の処理に予想以上の時間がかかったが、提出期限は今日の夜。
 しかも提出先は幹部長のダンテであり、ジョーリィに直接的な影響はないはずだ。
 それなのに、なぜ態々剣の執務室まで書類の確認に訪れたのか。
 いくら頭を捻っても答えは出ず、すっきりしない気分で爪先に視線を落として彼の言葉を待った。


 「……フン」


 紙片を捲る音が何回か続いた後、棘を含んだ溜息が吐き出される。
 恐る恐る顔を上げると、サングラスの奥のアメジストが苛立たしげに見下ろしてきた。


 「たったこれだけの内容を書くのに、随分と時間を要したものだな」
 「ごめんなさい……」


 不手際を糾弾され、返す言葉が見つからず素直に謝る。
 書類仕事も満足にできないようでは幹部失格だ。
 情けなさと悔しさで落ち込んだ翡翠の瞳が、再び地面に伏せられる。
 だが赤い頭が俯く直前に、黒い革手袋を嵌めた手が小さな頤に添えられた。
 驚いたフェリチータは長い指が込める力に逆らえず、くいっと上を向かせられる。


 「ぇ……っんぅ!」


 突然近づいてきた端整な顔立ちに戸惑う間もなく、唇に乾いた感触が当たった。
 すぐに押し込まれた彼の舌は、口内を余すところなく這い回る。
 未だに慣れない感覚が久しぶりのせいもあって、脊髄反射で逃げそうになってしまう。
 しかしフェリチータが腰を引くよりも早く、ジョーリィに抱き寄せられた。


  「ふぁ、きゃ……あっ」


 唇が離れても身体は放してくれず、ぴったりと密着したままではどうしても緊張してしまう。
 いつもより鋭敏になったフェリチータの神経は、彼の下半身が変化していくのをありありと感じ取った。


  「な、何で……っ」


 つい先ほどまで怒っていたはずなのに、こんなにも熱くさせるなんて。
 朱に染まった顔を向ければ、ジョーリィが愉悦の滲んだ表情で見下ろしてきた。


  「君が書類仕事で部屋に閉じ籠っている間、ずっと我慢していたからな。
  もうおあずけは解いてくれるだろう?」


 にやりと笑うと、今度は強く唇を押しつけられる。
 噛みつかれそうな勢いにフェリチータはよろめき、後退さった。
 けれども逃がさないとばかりに口腔を貪られ、キスをしたまま部屋の奥へと追い詰められていく。
 じりじりと後退し続け、とうとう腰が執務机にぶつかった。


 「ジョーリィ……だめ……っ」
 「なぜだ?」
 「だって、ここ……執務室……!」


 休みの日とはいえ、いつ誰が来るとも限らない。
 そして何より、仕事をするための部屋で行為に及ぶなんて絶対に不謹慎だ。
 非難を込めて力いっぱい睨みつけるが、まったく効果はなかった。
 喉の奥を鳴らして笑うジョーリィは、明らかに今の状況を楽しんでいる。


 「クックックッ……フェルは楽しくないのか?」
 「楽しいわけ……ひゃぁ!」


 黒い手袋を嵌めた大きな手がするっとスカートの中に滑り込み、反論しようと開いた口から小さな叫びが零れた。
 革の冷たさが太腿に触れ、背筋にぞくりと痺れが走る。


 「内側まで濡らして、これで愉しんでいないと?」
 「あ……ん、ぅ」


 脚を伝う愛液を掬い取るように長い指が移動し、中心に触れられた。
 既にびっしょりと湿った下着を擦りつけられ、思わず甘い吐息が漏れてしまう。


 「ゃ、んぁぁ……っ」
 「クッ、まだ大したことはしていないんだが」
 「久しぶりだか、ら……感じやすいだけ、で……」
 「君が感じやすいのはいつものことだろう?」


 ショーツの隙間から指が侵入し、蜜を溢れ出す場所を直に触られた。
 前の小さな花芽をくりっと抓まれれば、かろうじて残っていた理性もあっさりと熱情に飲み込まれていく。
 何とか快楽に抗おうとぎゅっと目を瞑るが、長い指を中に押し込められ、我慢できずに悲鳴を上げてしまう。


 「ジョーリィ……指、痛い……ッ!」


 革手袋に覆われたままの指は冷たく無機質な硬さで、フェリチータを内側からも苛む。
 だが目の前で嗤う男は恋人の哀願にも耳を貸さず、埋めた指を一番奥から少し手前で折り曲げた。


   「やっ……何、そこ、だめぇ……っ」


 苦しさにも似た快感が激流のように少女の身体を襲った。
 フェリチータが喉を反らして喘ぐと、体内からたっぷりと滴り落ちた愛液で執務室が甘い匂いに満ちていく。
 指を動かされればクチュクチュと粘着質な音が響き、彼を受け入れる準備ができてしまったことを嫌でも自覚させられた。
 こうなってしまっては、もう引き返せない。
 悦楽を素直に受け取るように教え込まれた身体は、既にフェリチータの意思とは関係なしにずきずきと疼いていた。


 「フッ……良さそうだな」
 「……うん」


 情欲を滲ませた獰猛な、けれども優しい瞳に微笑まれ、こくっと小さく頷く。
 これから訪れるであろう甘美な刺激を期待した心臓は、壊れそうなほど速く脈打っている。
 どうにかして平静を取り戻そうと息を深く吸い込もうとした時、ジョーリィに腰をひょいと持ち上げられ、背後にあった執務机の上に座らせられた。


 「ぇ……あ、やぁ……!」


 器用に右脚だけを下着から抜かれ、両腿をぐいっと押し拡げられた。
 タイトスカートは捲り上がり、秘部を見せつけているかのように開脚した格好をさせられ、頭がパニックに陥る。
 屈辱的な痴態に耐えられず、フェリチータは半ば無意識に切なく強請った。


 「も、だめ……ぇ、早く、お願い……っ」
 「あぁ」


 いつもより余裕のなさそうな掠れた声で告げられ、これ以上ないほどに顔が火照る。
 とろりとした蜜を零す場所に硬い屹立を宛てがわれると、熱いのにも拘わらず華奢な身体が大きく震えた。
 意識的に息をゆっくりと吐き出すと、見計らったようにジョーリィが自身を深く沈めてくる。
 充分濡れているはずなのに、しばらくの間彼を迎え入れてなかったためか秘部がひりひりと痛んだ。


 「ふ、あ……ん……」
 「……っく……」


 ジョーリィは奥深くまで埋めると、フェリチータを気遣うように柔らかい口づけを落とした。
 ちゅっちゅと軽く啄むようなキスをしながら腰を揺らし、彼女の感じる箇所を的確に突く。
 少女の身体も彼の大きさを思い出したのか次第に解れ、繋がり合う場所の動きが滑らかになっていった。


 「や……ンぅっ、ぁ……ッ」
 「は……っ」


 グチュグチュに熟れた内部を攪拌され、呼吸の仕方さえも忘れそうなくらい気持ちが良い。
 頭の中が真っ白になり、見えない力で天辺に引っ張られるような感覚がした時。
 ぴたりと彼の動きが止まった。


 「ジョーリィ……?」
 「……誰か来るな」
 「ぇ……ええ!?」


 一瞬だけきょとんしたフェリチータだったが、すぐに言われたことを理解し、顔面からさっと血の気が引く。
 先ほどまでの熱は一気に冷め、羞恥と恐怖のせいで何も考えられない。
 怯える心に呼応するように身体はガクガクと震え、その振動は中にいるジョーリィにも伝播した。


 「っ……力を、抜け……」


 息を詰めて眉根を寄せる彼の顔が酷く艶かしい。
 けれども今は見惚れている猶予などない。
 早く繋がりを解かなければと思うのだが、焦りと緊張で内部までも痙攣を起こしてしまう。


 「ぁ、やっ……ゃ、ああ……!」
 「……ぐっ……ぅ」


 痛みを感じるほどきつく締め上げられ、ジョーリィがくぐもった呻き声を上げる。
 ぎゅうぎゅうと収縮を繰り返す場所は一向に熱い猛りを放そうとはせず、腰を引こうとしても動けない。
 そうこうしている間に来客はドアの前まで来てしまったようで、軽いノックの音が無慈悲に響いた。

 『フェリチータ、僕だ。いるか?』

 扉を1枚隔てた廊下から、ノヴァが自分の名前を呼ぶ。
 フェリチータはますます狼狽し、不安のあまり一層身体に力が入ってしまう。
 しゃくり上げそうなのを懸命に堪えていると、ジョーリィが忌々しげに吐き出した吐息が耳にかかった。


 「……フェル、掴まれ」
 「え……きゃあっ!」


 泣き出してしまう寸前、深く低い声で囁かれた。
 聞き返そうと口を開いたのだが、突然抱え上げられた衝撃で鋭い叫びが漏れてしまう。
 膝裏に腕を回され、繋がったままの状態で身体を浮かされる。
 不安定な体勢に、咄嗟に彼の首にしがみついた。

 『どうした、入るぞ?』

 従姉妹の悲鳴を訝しく思ったのだろう、ノヴァが返事を待たずにドアを開ける。
 フェリチータを抱き上げたジョーリィが執務椅子まで移動し、膝に乗せた彼女と向かい合う体勢で座ったのは、ほぼ同時だった。


 「この間の件で……なっ!!」


 ばさり、とノヴァの手から書類が落ちた。
 だが拾う素振りも見せず、ただ呆然と目の前の光景を凝視し、小柄な肩を戦慄かせている。
 幸いにして2人はスーツを着たままで、髪を結ぶリボンやサングラスも外していない。
 淫らな部分は机の下に隠されているから、ノヴァには抱き合っているだけに見えるだろう。
 もし露わになっていたとしたら、この純情な少年は失神していたかもしれない。
 だからといって人前で行為に及んでいることに変わりはなく、フェリチータは恥ずかしすぎて声も出せず、ジョーリィに抱きつく腕に力を込めた。
 しかし、それは逆効果だったらしい。
 頭上では彼が満足そうに笑い、机を挟んだ向こう側からはノヴァが驚愕のあまり息を呑んだことが気配で伝わってきた。

 「お前たち……!! 執務室でイチャつくなとあれほど……!!
  不謹慎だと思わないのかっ」
 「……っ」


 聖杯幹部の当然の怒りに、何も言い返せない。
 尤も、口を開けば甘い吐息が漏れてしまいそうで、とてもではないが声を発せられる状況ではないのだが。


 「ノヴァ……キャンキャンとうるさいぞ」


 この場で唯一、冷静さを保っていられている非常識な男がぞんざいに言い放つ。
 けれども泰然自若とした態度とは裏腹に、彼女に沈めたままの分身は熱く膨らんだままで。
 彼が一言発し身じろぎするたびに中を擦られ、フェリチータは嬌声を上げないようにするだけで精いっぱいだった。


 「いいから離れろ!!」
 「だ、そうだ。お嬢様」


 ノヴァの怒声ににやりと笑ったかと思うと、ジョーリィは少女の細い腰を掴んで軽く持ち上げた。


 「やぁあっ!」


 予期せぬ刺激に襲われ、堪らずに甲高く啼いてしまった。
 傍から見れば、膝から降りるのを促したように思うだろう。
 だが男の意地の悪い表情が、フェリチータを嬲って弄んでいるのだと雄弁に語っていた。
 未だ痙攣の治まらない秘部は少しの摩擦では屹立を放そうとはせず、それどころかより奥へと誘うように蠢いている。


 「おい、お前……!」
 「ごめっ……ノヴァ、出てって……っ」


 もうこれ以上は耐えられない。
 涙をノヴァに見られないように、ジョーリィの肩に泣き顔を埋めた。
 快感と恐怖と羞恥が入り混じったごちゃごちゃの感情を抑えきれず、どうしても嗚咽が漏れてしまう。


 「どうやらお嬢様は気が動転しているようだな」


 膝の上で小刻みに震える恋人の背中を、ジョーリィが宥めるようにそっと撫でる。
 それと同時に冷たく鋭い視線をノヴァへ送り、無言で退室を命じた。
 実力者の最年少幹部さえも怯ませる眼光は、正に周囲から怖れられる相談役のものだ。


 「つ、次に執務室で不埒な真似をしたら斬るからな!」


 真っ赤に染まった顔に冷や汗を流すという奇妙な状態になりながらも、小言を忘れないのがノヴァらしい。
 フェリチータが謝罪の言葉を口にする前に、もうこの場にはいられないとばかりに青い髪を振り乱しながら部屋の外へ逃げるように立ち去ってしまう。
 扉が閉まった後も、足音が完全に聞こえなくなるまで少女の身体は強張ったままだった。


 「……フェル、もう大丈夫だ」
 「何が大丈夫なの! もうノヴァの顔まともに見られないよ……!」


 普段なら心が安らぐような言葉も、今の状況では揶揄されているとしか思えない。
 涙目のまま顔を上げると、案の定彼の口許は皮肉げに釣り上がっていた。


 「クッ……そう言う割には悦んでいたようだが」
 「そんなわけ……」
 「ノヴァに見られて興奮しただろう? いつもよりきつく締め……」
 「言わないで!」


 恥ずかしさのあまりつい大きな声を出してしまい、はっとして自分の口を慌てて押さえる。
 また誰かに聞かれて部屋に入ってこられたら、今度こそ羞恥心で死んでしまう。


 「ジョーリィの意地悪……っ」
 「それは君の方だろう?」


 湯気が出そうなほど顔を赤くした恋人を愉快げに、そして愛おしそうに見下ろしていたジョーリィだったが、ほんの少しだけ不服そうな表情を浮かべた。
 不思議に感じたフェリチータだったが、急に腰を突き上げられて一気に思考が吹き飛んでしまう。


 「あぁんっ、やぁ……!」
 「おあずけを喰らったままだったからな。俺が満足するまで責任を取ってもらおうか」
 「っやぁ、ふ……ぅあぁ、っ」


 中に埋められたままだった昂ぶりが一層体積を増し、卑猥な水音を立てて穿たれる。
 激しく揺さぶられながらも、重大な気がかりが僅かに残った理性を失うことを許さなかった。


  「だめ……っ、また……誰か、来るか、も……!」
 「……では、早く終わらせてやろう」
 「あ、んんぅっ……あぁっ」


 律動が速まり、最奥を何度も抉られた。
 座ったままの行為は突き上げられるたびに身体が浮き、落ちてくる時は自分の体重もかかってより深く貫かれる。
 性急な情事に思考能力は簡単に手放され、息苦しいほどの快楽が全身を支配した。


 「やっ、あ……ジョーリィ……っ!」
 「は……っく、フェル……っ」
 「あっ、あっ……い、やぁぁああん!」


 二人同時に限界を迎え、至福の境地に陶酔する。
 フェリチータの体内は彼が吐き出した白い欲望で満たされており、身も心も薔薇色の充足感に包まれた。


 「……ジョ……リィ」


 弛緩しきった身体をジョーリィに預け、絶頂の余韻に浸る。
 抱き締めてくれる腕の温もりが心地良く、微睡みかけていたのだが。


 「フェル……休むのは早いよ?」
 「ぇ……あぁんっ!」


 再び腰を叩きつけられ、淫らな喘ぎ声が口を衝いて出る。
 がつがつと容赦なく責め立てられる身体は、飽きることなく快楽を貪欲に強請り続けた。


 「やっ、人が……来ちゃ、う……!」
 「クッ……君が誰のものかを見せつける良い機会だな」


 いつもと変わらない人をからかうような口調であるが、独占欲を覗かせる紫の瞳に魅入られる。
 かなり年上なはずなのに、時折垣間見せる子どもっぽい面すらも大好きで、結局反抗する気が失せてしまった。
 諦めにも似た心境で自分から口づけると、ジョーリィも舌を吸って応えてくれるのが嬉しい。


 「んぅ……ふ、あ」
 「……は、あ……」


 気持ち良くて愛しくて、幸せで。
 アルカナ・ファミリアの幹部ではなく一人の少女として、今は目の前にいる大切な恋人のことしか考えられない。考えたくない。
 幸福感に身を委ねるように、フェリチータはそっと目を閉じた。






 その6時間後、書類を提出しに来ないフェリチータを心配した幹部長が剣の執務室のドアを開けた瞬間、飛び込んで来た光景に泡を吹いて倒れることとなる。
 けれども、お互いを夢中で求め合う2人はまだ知る由もない――。





fine.




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