朝に始まるフェアリーテイル




遠くから響く声で脳が覚醒する。
親友であるコキンメフクロウのフクロータよりも、そしてファミリーの誰かに起こされるよりも早く目を覚ましたことに、フェリチータは自分のことながら驚いた。
ベッドから起き上がりカーテンを開けると、今日も気分の良いレガーロ晴れだ。
思い切り伸びをすると、先程から聞こえる話し声が大きくなっている気がする。

……私の部屋まで聞こえるなんて、どんな大声で話しているんだろう?

フェリチータは怪訝な心地で身支度を済ませ、食堂へと急いだ。




「オレは食わねぇっつってんだろォ!?」

「デビトがこう言ってんじゃん!
 だからおれの分多くしてよ!!」

「そういう訳にはいきません!
 デビト、ちゃんと食べないと本当に倒れますよ!?」

「うるせぇなァ、テメーはオレの母親か!!」

食堂に足を踏み入れると、デビト、パーチェ、ルカが怒鳴り合っていた。
その奥でジョーリィが不機嫌そうに食事をしながら、左手に持ったフラスコをリズミカルに振り続けている。
入口近くでは、リベルタ、ノヴァ、ダンテが呆れながら幼馴染3人組みの言い争いを眺めていた。

「あ、チャオ!お嬢」

「珍しいな、お前がこんな早く起きるなんて」

「おはよう、お嬢さん」

三者三様の朝の挨拶に笑顔で返し、フェリチータは疑問を口にする。

「何かあったの?」

「いや、いつものことだ。
 お嬢さんは気にしなくていい」

「しっかし、こんなうるさい中でジョーリィはよく朝飯食えるなー。
 よっぽど腹減ってんだな」

「お前が言うな」

「なんだと、ひよこ豆!」

こっちもこっちで口論が始まりそうであったが、

「口で言っても分からねぇなら撃ち殺すぞ、ヘタレ従者ァ!!」

デビトが本当に殺しかねない勢いで銃を抜いたので、その場にいる全員が――相談役の男以外、一斉に彼に注目した。

「やめろよデビト!」

「いくら何でもやりすぎだ」

「うるせェ!ガキ共は黙ってろ!」

どうやったらこの場を収められるのか?とフェリチータが思案していると、

「やめてよ!」

悲痛に叫ぶ声。
そして拳が空気を切る音。

がしゃん!

パーチェが打った突きは銃に当たり、強制的にデビトの手から弾き飛ばす。
持ち主の手を離れた銃は綺麗な放物線を描き……

がんっ!
ぱりんっ!

やり取りを見ていた皆が凝視する中、ジョーリィの頭に落下した。

「あ」

ジョーリィを除く7人の口から同じ音が漏れる。
しかし、そんなことを気にしている場合ではなかった。
ジョーリィからモクモクと藍紫色の煙が立ちこめ、あっという間に食堂は覆われてしまう。

「ゴホッ……ゴホッ」

突然の自体に驚いたフェリチータは怪しげな色の煙を肺いっぱいに吸い込んでしまい、大きくむせた。

「お嬢様!!」

「おい、窓を開けろ!」

ダンテの的確な指示に誰かが従ったおかげで空気が入れ替えられ、徐々に食堂の状況が見えてくる。
最初にフェリチータの視界に飛び込んできたのはルカだった。

「無事ですかお嬢様!?」

「うん」

あまりにも必死な様子に若干苦笑しつつも返事をする。
そこでやっと異様な光景を認識した。

「あれ?」

ルカの顔がいつもと異なる。
何故か――幼い。
そして抽んでた長身でもないはずなのに、見上げなければ目が合わない。

「……お嬢様?」

ルカも異変に気付いたようだった。
何か言おうとフェリチータが口を開いた瞬間。

「何だよこれ!!」

場違いなくらいに幼稚な子どもの悲鳴が響く。
どうして館の食堂に子どもがいるんだろう、と声のした方に視線を遣ると慣れ親しんだ金髪がブカブカのスーツの中で慌てふためいていた。
金髪男子の横に立つ黒髪の子ども、いや幼児は呆然と自分の手を見つめている。
首を動かすとダンテがいた。
だがトレードマークのスキンヘッドには髪が生え、スティグマータは見えない。

「……毛がある」

頭を撫でている姿にどこか懐かしさを感じながら更に食堂の奥を見ると、2人の男の子がやはり唖然とした様子で立っていた。
フェリチータにはどちらも知らない顔だが、銀髪の子が外れてしまいそうな眼帯を押さえているのを見てデビトだと思い至る。
ということは隣にいるのはパーチェだろう。
茶色い髪を振り、何度も目を擦っている。

……ジョーリィは?

姿を確認出来ない男を捜そうと、フェリチータは一歩踏み出した。
しかし、足が何かに引っかかり思うように動かない。
足許を見下ろすとスーツを引きずっており、やけに地面が近い。
ようやく自分たちが若返っていることを理解し、眼前に突っ立ったままの従者に呼びかけようと……

「……ル」

「お嬢様ぁぁぁーー!!」

したのだが、当の青年――今の姿は少年と言った方が正しいが、彼の大絶叫によってかき消された。


***


「つまり、この姿になったのはお前が持っていたフラスコの中身のせいなんだな?」

「ああ、そうだ」

「そうだ、じゃねぇ!」

みんなが一通り騒いだ後、ひとつしか考えられない原因――気絶して倒れていたジョーリィを叩き起こし問い詰めると、予想通りの答えが返ってきた。

「どうしてこんな物を作ったんだ!?」

「こんな物とは浅薄だな。
 狂乱の諧謔曲『スケルツォ・バージョンセスト』……私が今まで作ったカクテルの中で最高傑作と言ってもいい」

「狂ってんのはテメーだろーがァ!!」

「全くです……最悪としか言えません」

「姿が変わってもお腹空くね」

冷静に状況を判断するダンテ。
怒鳴るリベルタ。
尤もな質問をするノヴァ。
リベルタよりも怒鳴るデビト。
嫌悪感を滲ませているルカ。
いつの間にか持って来た朝食のパニーノを頬張るパーチェ。
そして、大事件を引き起こした張本人にも関わらずしれっとした顔をしているジョーリィ。

……みんな小さい。

フェリチータはどこか他人事のように感じながら大アルカナたちを見回した。
ダンテ以外は全員子どもそのもので、特にノヴァは幼児にしか見えない。
ついカクテルの効果に感心してしまう。

「もっと詳しく教えろ」

「理解出来るとは思えないが……まぁいい」

ダンテに睨まれ、渋々といった様子でジョーリィが話す。

「まず、ポリフェノールを多く含んだカカオマスを……」

「誰が成分を説明しろと言った!効能を言え!」

「それはもう身を以って体験しているのでは?」

ジョーリィの口角が皮肉げに持ち上がる。
子どもの姿になっても相手をからかうような態度は変わらないようだ。

「いいから言え!」

「そう怒鳴るな……私もこれ程効き目が出るとは想定外だった。
 このカクテルは諜報部の潜入捜査用に作ったものだ。
 一時的に外見年齢だけを若返らせ、記憶や身体能力は変わらない……素晴らしいだろう?」

「ンな訳ねーだろ!」

「何故そんな危険物を食堂に持ち込んだ?」

「まだ未完成でね。
 常に振動を与えていないと液体の状態を保っていられず、気化する特性がある」

そこが唯一の難点だな、とわざとらしく首を振る騒ぎの元凶。

「だからフラスコを持ってたんだ……」

朝食を取っていた時のジョーリィの様子を思い出し、フェリチータは納得する。

「で、いつ元に戻るのですか?」

「知らん」

……。

一瞬の沈黙。
そして、

「は?」

本日2度目の現象――ジョーリィを除いた全員の口から同じ音が、同じタイミングで出た。

「未完成だと言ったはずだ。
 まだラットを使った動物実験すら行なっていない……朝食後の予定だったのでね」

「ってことは一生このままー!?」

リベルタの煩悶な叫びに頭を振るルカ。

「そんなはずはありません!
 いつか効果が切れるはずです」

「でもよォ、それがいつになるか分かんねぇんだろ?」

幼くなっても変化ないデビトのやる気の無さに、ノヴァが噛み付く。

「戻らないと困る!仕事はどうするんだ!」

そうだ、仕事。

当たり前の事実にフェリチータもようやく意識が向いた。
レガーロの街を巡回中に有事があっても、この姿では対処出来ない。

「みんな何歳になっちゃったんだろうね」

パーチェの素朴な疑問に即答したのはルカだ。

「お嬢様は6歳です。
 この顔立ちに身長……間違いありません」

「……流石としか言えないな」

呆れながら呟くノヴァに振り返ってルカは続ける。

「ノヴァは5歳くらいですね。
 私も同じように10歳程若返っているようです」

「俺とリベルタもそれぐらいだな」

「おう」

金髪の小さな頭をくしゃくしゃっと撫でる大きな手。

「おれらはいくつだろうね?」

「あの写真を撮った頃じゃねぇのか?」

「でもデビト、義眼のままだよ?」

「どうやら効果には個人差があるようだな」

実験物でも見るようにパーチェやデビトを観察するジョーリィに腹立たしさを覚えながらも、それ以上にフェリチータには不思議なことがあった。

――ジョーリィは何歳だろう?

容姿から推測するにルカよりは若い気がする。
しかし鋭い眼光はとても子どものものとは思えず、全く判断がつかない。

「お嬢様は私の年齢に興味があるのかな?」

パーチェとデビトからフェリチータへと視線を移したジョーリィに、内心を言い当てられた。
いつもと変わらない人を食ったような声音に、フェリチータはジョーリィを軽く睨む。

「クッ……そんな幼気な顔で睨んでも可愛いだけだよ、お嬢様」

「お嬢様、ジョーリィから離れてください!」

急に体が宙に浮いたと思ったら、ルカに抱き上げられていた。
昔はよく抱っこしてもらったものだが、今は気恥ずかしくて堪らない。

「ルカ、降ろし……」

「あー!いいなールカ!
 おれもお嬢を抱っこしたい!!」

「駄目です、パーチェ!
 あなたは絶対落とします!」

「バンビーナを独り占めしてんじゃねぇよ」

フェリチータそっちのけの言い争いを遮るように、ダンテが鋭い声で命令を出す。

「喧嘩してる場合か!
 元の姿に戻る方法を考えろ!」

「でもオレたちに分かる訳ねーじゃん。
 あ、解毒剤は?」

リベルタに訊かれ、ジョーリィは小さく肩を竦めた。

「あればとっくに飲んでいる、とは考えなかったのか?
 このカクテルに思考能力を低下させる効果はないはずだが?」

「では、どうすればいいんだ」

ノヴァが苛立たしげに問う。

「そうだな……。
 身体を大きくさせる、つまり成長させるという意味で一般的なのは、君も知るようにカルシウムの摂取だろうな」

「それだけじゃダメだと思う」

何とかルカの腕から抜け出して、フェリチータが言った。
カルシウム摂取だけで成長出来たら、ノヴァは苦労していないだろう。

「その通りだよ、お嬢様」

ジョーリィの口許が愉快そうに歪み、言を継ぐ。

「カルシウムを効率良く吸収する為にはビタミンDも同時に摂取するべきだ」

「ビタミンD?どうやって摂るんだ?」

頭の上に疑問符を浮かべるリベルタ。

「太陽光を受けた皮膚細胞による生合成が一番手っ取り早い」

「??」

ジョーリィの答えは益々リベルタを混乱させるだけだった。

「日光浴をしろということだ、馬鹿」

「バカとはなんだ!……ってそんだけでいいのか!?」

「じゃあ、みんなでミルクジェラートを食べながら日向ぼっこをしよう!」

いつの間にか傍に来たパーチェが、意気軒昂として声を上げる。
普段なら一蹴するところだが『身体を成長させるカルシウム吸収率を上げるには、ビタミンDを作る為に陽の光を浴びる』という説明を聞いた後だと、パーチェの提案はあながち間違っていないように思える。

「けどよォ、ダンテは十分デケェじゃねぇか。
 成長っつーか、老化だろォ?」

「老化だと……?」

デビトの言葉にダンテが嫌そうに顔をしかめた。

「老化には様々な説がありますが、有力なのは活性酸素説でしょうか」

「おい、ルカまで……」

「活性酸素説?」

「普段の呼吸によって体内に取り入れている酸素で老化するということですよ、お嬢様」

幼児化したフェリチータを見る度にルカは相好を崩す。

「よーっし!
 ミルクジェラートを食べながら日向ぼっこをして、たーっくさん深呼吸すれば解決だ!」

底抜けに明るいパーチェの笑顔。
小さくなっても性格が変わらないのは彼にも言えるようだ。

「そんなことで元に戻るとは到底思えないが……。
 まぁ、何もしないよりは試してみるのも一興だな」

「おい、ジョーリィ!
 今は子どもなんだから葉巻を吸うな」

「知ったことか」

咥えようとしていた特製葉巻をダンテに取られ、ジョーリィはイライラしているようだった。
しかし言い返す声は可愛らしい男の子そのもので、いつもの怖さがまるでない。
ジョーリィも自分の声が不快らしく、それ以上反論することはなかった。

「じゃあ棍棒御用達のジェラート屋に行こう!」

「オレはパス。甘いモンは食いたくねェ」

「そう言うなよー、デビト。
 お嬢も行くだろ?」

リベルタに同意を求められ、フェリチータは素直に頷いた。

「だが、服を調達しなければ外には出られないな」

ダンテがノヴァを見遣る。
8人の中で最小、もとい最年少のノヴァはかろうじて顔だけをスーツから出していた。
そんな状況にも瞬時に対応出来るのが上級召使い、ルカだ。

「確かマンマの部屋にノヴァの昔の服があったと思います。
 お嬢様の服はもちろん私が持っていますよ!
 あ、デビトとパーチェの服もあるはずです」

「……何で持ってンだよ」

「……ルカちゃん気持ち悪い」

本来ならば感謝されても良い場面だが、全員から白い目で見られるのもルカの常である。

「リベルタの服は俺の部屋にあるだろう。
 ジョーリィ、お前はどうするんだ?」

「こんな姿で外出して醜態を晒す気はない。研究室に戻って確実な方法を突き止める。
 ……おい、ルカ」

「な、何ですか?」

ジョーリィに呼ばれ、ルカは警戒するような表情になった。
絶対ろくなことではない――そんな風である。

「お前は研究を手伝え。検体が必要だ」

「……はい?」

呆気に取られたのは一瞬で、ルカはすぐに我に帰った。

「私はお嬢様とジェラートを食べに行くんです!
 貴方の怪しげな研究の実験体になる暇はありません!!」

「お前は元に戻るよりジェラートの方が重要だと言いたいのか?」

2人の錬金術師の間に一触即発、という空気が流れるが――

「なぁ、ルカとジョーリィって似てねぇ?
 兄弟みてーだ」

リベルタの無邪気な発言で一気に場が凍り付いた。

「何を言ってるんですか!
 私がこんな人と似てるなんて有り得ません!」

普段は穏やかなルカが、憤怒の形相で大きな声を出す。
フェリチータは信じがたい気持ちで従者を見上げた。

「貴様は頭だけではなく目も悪くなったのか?」

ジョーリィも絶対零度の視線と口調で言い放つ。
だがルカとは違い、どこか楽しそうに見えた。
フェリチータは訝しく感じ、アルカナ能力を発動させようと――

ポンッ!

「あっ」

何の前触れもなく、軽い音を立てて身体が元の大きさに戻る。

「お嬢様!」

「お嬢!元に戻れたんだな!」

「お前、どうやって戻った!?」

「バンビーナに見下ろされんのは新鮮だなァ」

「お嬢がおっきくなったー!」

「お嬢さん、身体に不調はないか?」

「う、うん……」

6人同時に話しかけられたフェリチータは気圧されつつも返事をした。
いつもは自分より背の高い人たちに見上げられるのはおかしな気分だ。

「元に戻る方法を我々にも教えてくれるかな、お嬢様?」

子ども特有の大きな瞳に問われ、フェリチータは言葉に詰まった。
フェリチータのアルカナ【恋人たち】は相手の心を覗く能力だ。
『ジョーリィに能力を使おうとしたら元に戻った』と正直に告白すれば、この紫の双眼を持つ男の子にどんな厭味を言われるか分からない。
だが状況が状況だ。
そんなことを言っている場合ではない、と考え直す。

「アルカナ能力を使おうとしたら戻ったの」

『誰に』は伏せておいた。

「ほう、能力を……」

ジョーリィが意味ありげな笑みを浮かべた瞬間、右目が輝く。

ポンッ!

気付いたらフェリチータの目の前に、長身痩躯の見慣れた相談役が立っていた。
小さくなった時にずり落ちてしまったサングラスを掛け直している。

「ジョーリィ!
 お嬢様に能力を使ったんですか!?」

ルカが非難の声を上げた。
しかしジョーリィは一切悪びれる様子もない。

「使おうとしただけであって、実際には使用していない。
 発動する前に身体が戻ったからな」

「当たり前です!
 お嬢様に能力を使ったら許しません!」

ポンッ!

3度目の音で、今度はデビトが大人に戻っていた。

「やっぱり元の姿の方が便利だナ。
 ガキのままじゃ出来ねぇことがあるしなァ」

どがん!

「戻ったー!」

破壊音の後に響いた歓声。
見れば壊れたテーブルの横でいつものパーチェがガッツポーズをしている。

「おい!
 何でテーブル壊した!?」

リベルタが吃驚した。

「いやー、元に戻ろうと思って能力使ったんだけどさー。
 発動が止まらなくて壊しちゃった」

「壊しちゃった、で済むか!」

ノヴァが叱責する。

「能力発動が止まるかどうかも個人差があるようですね」

「俺とリベルタ、それにノヴァの能力は危険が伴うな」

考え込むルカとダンテはちらりとジョーリィを見遣った。

「何だ」

2人の視線を受け、ジョーリィは不審そうに眉を顰めている。
だがフェリチータには視線の意味が分かった。

もしジョーリィの能力が発動していたら私は……。

恐ろしい想像を頭から振り払い、未だカクテルが効いているリベルタ、ノヴァ、ダンテ、ルカに訊く。

「4人はどうするの?」

「そうですね……。
 能力が発動しない可能性もありますし、取り敢えず元に戻ることが優先です」

「みんなを巻き込まんように俺たちは別室に行くか」

そう告げて食堂を出て行く4人をフェリチータは眺めた。
大人、少年、子ども、幼児の組み合わせは余りにもおかしくて、つい笑ってしまう。

「おい、笑うな!」

「ただでさえチビなのに、今はお嬢の腰より低いもんなぁ?」

声を荒げるノヴァを揶揄するリベルタ。

「うるさくするんじゃない!」

「貴方もですよ、ダンテ」

不機嫌そうなダンテを窘めるルカ。

「ジジイには腹が立つけどよォ、小さいバンビーナを拝めたのは悪くねぇな」

「お嬢、ちっちゃくて可愛かった!」

フェリチータに笑いかけるデビトとパーチェ。

「あの薬草を煮詰める時間を短くすれば……」

懲りずに次の実験計画を考えているジョーリィ。
小さくても大きくても――どんな姿であっても変わらないファミリーたち。
彼らと一緒ならば、どんなことだって乗り越えられる気がする。

「じゃあ、私は仕事して来る」

食堂を背にしたフェリチータの微笑みを誰も見ることはなかった。





その後、無事全員元の姿に戻ることが出来た。
夜のみせしめは満場一致で【月】……と思いきや、6対1で【節制】になる。
理由は『小さくなったリ・アマンティを1人だけ抱っこしたから』。
報告を受けたイル・モォンドからの罰でラ・テンペランツァの悲鳴が館中に響きわたったのは、また別のお話――。


fine.




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